代車で出てきたのはフォルクスワーゲンup!だった。
「今回の代車はup!です。up!、まだ一度もお出ししたことなかったですよね?」(セールスT氏)
「ないよ。(あれ?今回up!なの? 電話で予約した時にはゴルフヴァリアントって言ってたような・・・)」(私)
「かなり色がキョーレツですが、下ろしたてです。まだ14Km。初代車」
キーを渡されたのは”コーンフラワーブルーというボディーカラーのhigh up! 4ドア。
車両価格は1,932,000円のモデルで、限定のorange up! を別にすればup!の中では最も高価なモデルだ。
「ちょっと、ひと通り運転の説明しますね。」
「え?そうなの?」
「はい、基本マニュアルシフトなので。ちょっと変わってまして。」
いろいろ説明してくれたのだがどうもしっくりこない。
クラッチペダルが無いマニュアルシフト車という意味では、DSGのパサートも同じようなものだ。
何が違うのだろうと思いつつドライバーズシートに収まってシートベルトを装着しエンジンを始動した。
シフトレバーに目をやって
「ん?」
「パーキングポジションはありません。右側はニュートラルとリバースです。ニュートラルの下がリバースで通常と違いますから気をつけてください。発進するときはシフトレバーを中央にします。上へ押してシフトアップ、下へ引いてシフトダウンです。一応、左へシフトレバーを押すとオート、もう一回押すとマニュアルと交互に切り替わるようになっています。」
「オートにしておけば普通と一緒なんでしょ?」
「まぁそうなんですが、基本マニュアルなので・・・」
とりあえずオートモードに切り替えてディーラーの駐車場から車道に出ようとして早速躓いた。
まず、ブレーキから足を離しても全くクリープしない。
しかも、1,000ccの小さなエンジン、パサートの感覚で軽めにアクセルを踏んでもピクリとも動かない。
しっかりアクセルを踏み込んで走り出した。
2速、3速、4速・・・
シフトアップして5速定速走行に達した時点で素直に思ったのは
”こりゃダメだ”
だった。
いや、この感想はあくまでも個人的な好みの問題であることをお断りしておく。
オートでは一定の条件により自動でシフトアップするが、クラッチが切れ、シフトアップした後、クラッチが繋がるまでに2~3秒かかるのだ。
クラッチが切れた瞬間スピードはガクっと下がり、その状態が2~3秒続いた後クラッチが繋がってモワッと加速する。
この間運転手でさえ身体が前後にガクッ、ガクッと動くので、自分が助手席に座っていたらチョット耐えられないなと思う。
マニュアルモードでシフトチェンジもしてみた。
アクセル一定でシフト操作をするとオートと全く同じ挙動だ。
3ペダルのマニュアルのつもりで操作してみた。
シフトチェンジする前にアクセルを戻し、シフトチェンジをしたらゆっくりアクセルを踏み込む。
この間左足は動かしていないがクラッチペダルを踏んでいるつもり。
なるほど、そういうことかと納得した。
要するにクラッチペダルの操作を代行してくれるだけのセミオートマチックと言えば良いのだろうか。
印象としては、オートマ限定ではない免許を取り立ての、運転がそれほど得意ではない若葉ドライバーがクラッチペダルの操作をしているような感覚と言ったら良いだろうか。
”回転が落ちる前にクラッチつなげよ、もっと速く!”
”シフトダウンするときはちゃんと回転合わせろよ!”
そんな事を言いたくなるクルマだ。
諸費用を加えれば200万円を超えるクルマなのだがフットレストはない。
自分はどちらかと言うと腕を伸ばし加減で運転するスタイルなのだが、ステアリングはチルトだけでテレスコピック非搭載のため、ステアリングに合わせてシートポジションをセッティングすると左足が浮いてしまう。
シート表面はパンッと貼った感じでホールド感が薄いため、腰が落ち着かない。
乗車定員は4名。
自分のドライブポジションに合わせた状態でのリアシートの足元はやっと足が収まるくらいのスペースしか無い。
腰を引いて姿勢よく座らざるを得ず、後席はイマージェンシーと考えたほうが良さそうだ。
それはリアウィンドウにも言えることで、4ドアのリアウィンドウは一応チョッと外へチルトするだけだ。
ステアリングホイールはなんだかセンターがズレている感じ。
それは良いとして、自分はステアリングの切り戻しは手のひらを添えて自然に元の位置に戻るステアリングホイールを手のひらの中で滑らせる、多分教習所ではやっちゃいけないスタイルだ。
このステアリングホイール、3本スポークのうち下へ伸びるスポークにはVWのアイデンティティーとも言える穴が開いているのだが、このプラスチックで滑りが悪い黒の穴パーツ、ステアリングのグリップ部分に回りこんでいる。
high up!は一応レザーステアリングなのだが、この部分だけ滑らないプラスチックなのだ。
革のドライビンググローブをした手のひらの中で、この部分だけスルッと回らずに微妙に引っかかるのがとっても不快だった。
ルームミラーの奥には各種センサーを収める縦長の箱のようなパーツがあるのだが、これがデカい。
ルームミラーよりこの箱の部分が視界の中で妙に目障りだ。
最初はルームミラーが斜めに曲がっているのかと思ったほどに存在を主張しすぎてウザい。
この代車は残念なことに大嫌いなコンチを履いていた。
サイズは185/55R15だ。
999ccの決して静かではないエンジンとそれほど防音にコストをかけていないup!には絶対に向いていないタイヤだと思う。
とにかくゴツゴツと硬い乗り味でロードノイズも耳障りで大きい。
”最近流行りみたいですね”(T氏)
という黒塗りリヤハッチ。
これも実は自分の嫌いなパターンだ。
VOLVO V40とか最近ではBMW i3とか・・・
”ビートルで屋根やボンネットを黒くしたりとか。後、ミニなんか屋根だけ別の色にしたり模様にしたり、なんてのもありますよね”
「いや、それとリヤハッチだけ黒くするのとはぜんぜん違う。理解できんし好きじゃない。」
”あはは、そうですか。” (T氏苦笑)
そのハッチを開けてみた。
まぁ、普段のお買い物や通勤の足と考えれば、これくらいあれば十分か。
トレイを引き上げると更にその下にもスクエアな収納がある。
そして、その収納の蓋をまた引き上げると!
スペアがない。
代車返却の際にT氏に聞いてみた。
「コンチダメだわ、うるさいし乗り心地悪いし。なんでまたこんなクルマにランフラットなの?」
”いや、あれはランフラットじゃないと思いますよ”
「えぇ!だってスペア無いじゃん。」
”そうなんですけど、違うんですよ”
とハッチを開けて説明してくれたところによると、
この写真の黒いケースの右上の方に見える白い塊がパンク修理キットだというのだ。
”これでパンクは直してくださいってことですね。最近軽自動車とかも多いようですよ”
「マジか!ユーザーにその場でパンク修理しろって?!」
”そういうことになりますねぇ”
だそうである。
一度コンクリート打ちっぱなしの縁石にサイドウォールをヒットしてバーストさせた経験がある某オヤジとしては納得出来ないものがある。
まぁ、最近の任意保険には大抵もれなく無料のロードサービスが付いてくるのでそれを活用しろということか。
車重900Kgで軽いドアの3段階ストッパーはこんなに簡略化されたものだった。
コストカットと思われる仕様はこんなところにも。
エンジンフードオープナーは助手席の足元にある。
パサートやゴルフはちゃんと右側のドライバーズシート側に設置されているのだが、この子は助手席側で本国仕様そのままと思われる。
ボンネットフードにダンパーはないので、ボンネットフード側に付いているステーを引き下ろしてボディー側の穴に差しこむようになっている。
ガソリン給油口は施錠時にロックがかからない。
キャップに鍵が付いていてエンジンキーと共通で施錠、解錠ができるようになっている。
最後にエンジンの写真。
おっと、肝心のシティーエマージェンシー機能を動作させてみるのを忘れた。
って、もし作動しなかったらと思うと怖くて試せないよね。
久保田利伸を気取ってぶんぶんぶんぶぶんぶ~ん♪なんて無理無理。
「絶対無理。あのシフトチェンジのフィーリングだけで100%無いわ」
”好き嫌いがハッキリ出るクルマみたいですね。今日免許取りたての若いお嬢さんが試乗に来られて、マニュアルで免許取られたそうなんですけど、マニュアル車みたいでとっても楽しい、って言ってましたし。マニュアル好きな人には割りと評判いいみたいですけど、嫌いな人は受け付けないみたいですね。”
「いや、マニュアル嫌いじゃないけど、シフトアップ下手すぎで我慢出来ないもん。あれならペダルのあるマニュアルのほうがよっぽどいい!」
最後に、アクティブセーフティーを売りにしているクルマだが、ゆるい上り勾配で停車して発進しようとした時にブレーキから足を話すとズルズル後ろに下がるのはいかがなものか。
ブレーキのオートホールドモードはこういうクルマにこそ装備するべきだと思うのだが。
そんな訳で、ディーラーと自宅の間の往復プラスアルファで20Km程度走っただけで満腹感のないお腹いっぱい状態になってしまったフォルクスワーゲンup!だった。
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