Yahoo!ニュースの極端なタイトル
先日、Yahoo!ニュースの”ライフ”カテゴリに掲載された、ある記事が目に留まりました。
『NISAは庶民から搾取するための装置?…節約の達人が「株式投資」に否定的な理由』
発信元は「THE GOLD ONLINE」。記事末尾には著名な作家の名前が記載されていますが、文頭に”◯◯氏の新著よりその理由をみていきましょう”とあるため、本人が書いた記事ではないと思われます。
それにしても、このタイトルは誤認も甚だしいと感じます。
『NISAは庶民から搾取するための装置?』
これからNISAを検討している人がこれを読んだら、大きな誤解を招きかねません。まずは、政府広報の定義を改めて確認しておきます。
参考:「NISA」って何?わかりやすく解説(政府広報オンライン)
”NISAは、家計の安定的な資産形成を支援するための制度です。通常、株式や投資信託などから得られた配当や分配金、売却時の譲渡益は所得税や住民税の課税対象(注)となりますが、NISA口座で投資した一定の購入分については、その配当や分配金、譲渡益が非課税になります。”
(注)所得税(15%)、住民税(5%)、復興特別所得税(所得税額の2.1%)の合計20.315%の税金がかかります。
売買益にかかる20.315%の税金が「無税」になることの、どこが”搾取”なのでしょうか。
【実例検証】住友商事(8053)の場合
具体的に、先週金曜日にストップ高(1,000円の爆騰)を記録した住友商事でシミュレーションしてみます。
2年前の2023年4月の株価は2,450円でしたので、に100株購入していたとすると、損益は1単位株で439,000円のプラスです。
株価は2年間で約2.8倍に値上がりしていて、あと500円上がればトリプルバガー(3倍)達成です。
そして、2年前に購入して継続保有していたこの株を、仮に先週末の株価で1単位(100株)売ることが出来たと仮定すると、以下のような計算になります。
■一般・特定口座(非NISA)の場合
売却益にかかる税金(20.315%):約89,183円
手元に残る利益:約349,817円
■NISA口座の場合
税金:0円
手元に残る利益:439,000円
これのどこが”搾取”なのでしょうか?むしろ、20.315%という税による搾取を回避するために国が認めている制度がNISAなのです。
「不見転(みずてん)」という的外れなまとめ
当該記事の最後は、以下のように締めくくられています。
”だから、NISAなどというのは、もともとどういうところに投資しているのかも知らずに、不見転(みずてん)で大切な資金を他人に預けてしまうわけだから、まあ私に言わせると、結局庶民からなけなしの金を集めて中間マージンを搾取するための装置だ、というように思わずにはいられません。”
これを読むと、筆者がNISAの仕組みを根本から誤解していることが明確にわかります。
そもそもNISAは、”一定の決められた枠の中で発生した利益も損失もなかったことにしてあげるから好きに投資・運用してね”という枠組みが提供されているだけです。しかもリスクが高い一部の投資商品はNISAでは売買出来ないように配慮もされています。
100歩譲って、もしかすると筆者は「投資信託」と「NISA」そのものを取り違えているのかもしれません。そうであったとしても、投資信託は、運用方針や手数料が記載された「目論見書」を理解したうえで選ぶものであり、決して「不見転(みずてん)で他人に預けっぱなし」にするようなものではありません。
上限額の範囲内で、個別株でも投資信託でも、応援したい企業や利益を追求したい銘柄を自ら選ぶ。その目的が何であれ、それは個人の自由であり、同時に自己責任です。制度そのものを「搾取の装置」と決めつけるのは、あまりに乱暴な議論でしょう。
制度の特性を理解して向き合う
もちろん、投資にはリスクが伴います。NISA口座では損失が出ても「損益通算」や「繰越控除」ができないというデメリットはあります。しかし、それは「利益は非課税」という大きなメリットを享受するうえでのルールです。
結局のところ、「よく理解したうえで活用する、理解できなければ利用しない」。これに尽きます。
アクセス数を稼ぐための極端なタイトルや煽り記事に惑わされず、自分の資産を守るための知識を冷静に身につけていきたいものです。
0 件のコメント:
コメントを投稿